Dgt Magazine

運営10周年を迎えて未だ進化する『怪盗ロワイヤル』:下島プロデューサーと川口代表が語るゲーム運営の可能性


DeNA Games Tokyoが運営する『怪盗ロワイヤル』は今年でリリースから10周年を迎えます。2018年度には、リリース9年目でプレイヤーの熱量が維持~上昇トレンドになりました。この一年間での『怪盗ロワイヤル』のビジョン・戦略や、10周年を迎えるにあたっての意気込みを『怪盗ロワイヤル』プロデューサーの下島 海と、DGT代表の川口 俊にインタビューしました。

 

怪盗ロワイヤルを筆頭に、長期運営・大規模運営に強みを持つDeNA Games Tokyo

– まずDeNA Games Tokyo(以下、DGT) の事業規模、事業特性についてお話しいただけますか

川口 DGTは今期で5期目を迎える会社になります。DeNAの子会社として、ゲームの運営機能に特化して戦略的に設立された会社です。設立の背景ですが、以前はDeNAで新規開発も運営も両方行っていました。新規開発と運営では必要な能力も異なります。そのため、運営の機能を会社ごと切り離して、運営に強みを持つプロフェッショナル組織を作り、DeNAで開発・運営してきたビッグタイトルを筆頭に長期運営していくというのが設立の大きな目的です。

– モバイルタイトルの運営経験の長いDeNAグループだからこその戦略と言えそうですね

川口 もともとDeNAではフィーチャーフォン時代からゲーム運営の経験を積んできているので、分析力や、UXベースの思考でプレイヤーの感情を揺さぶるようなゲーム体験を生み出すことなどには実績があります。そういった強みはDGTにも引き継いでいますし、そこに新たな付加価値、僕らが運営する意義を乗せていくという試みが、さらにDGTの面白いところです。プレイヤーに届けるデライトの総量が増えるということを意識してゲームを運営しています。

– ありがとうございます。では、『怪盗ロワイヤル』の説明をお願いします

下島 怪盗ロワイヤルは2009年にリリースされ、今年で運営10年目になるタイトルです。コンセプトはプレイヤーが怪盗になって世界一の怪盗をめざすというRPGです。リリース初期はお宝の奪い合いがメインのゲームでしたが、2013年頃にカードバトルがメインのゲームに様変わりしました。カードを使ってバトルを行い、獲得ポイントを競い合うというのが基軸のゲームです。

運営9年目でプレイヤーの熱量が高まった『怪盗ロワイヤル』の戦略と取り組みとは

– 2018年度は運営9年目にして『怪盗ロワイヤル』が大きな盛り上がりを見せたと伺いました

下島 プレイヤーの盛り上がりや熱量を測るための分かりやすい指標として売上と利益という二つがあります。いずれも例年ですと昨年対比で下降トレンドでしたが、2018年は昨年対比で維持~上昇トレンドになりました。一般的には運営年数を重ねるにつれて下降トレンドに陥り、勢いを失ってしまうタイトルが多いのですが、昨年度の『怪盗ロワイヤル』においてはそれを打ち破ることができました。そういう意味では大きな成果を残すことができたかなと思っています。

川口 9年にも及ぶ超長期運営タイトルにおいて、このような大きな伸びを初めて見ました。コラボ施策などでプレイヤーの体感を変えることが出来たことが事業数値にも表れたと思います。この運営年数でプレイヤーの熱量を維持・上昇させるという事例はなかなか業界内でも無いので、我々の運営力にも手応えを感じました。また、デジタルマーケティング・マスマーケティングなどの広告で新規プレイヤーを呼び込むというアプローチではなく、既存プレイヤーに対しての積極的なアプローチでトレンドを維持・上昇させるという取り組みによってタイトルが盛り上がったことも、DGTのタイトル運営力が一層強くなってきたと実感出来たポイントです。

– 『怪盗ロワイヤル』のプロデューサーに就任したときに抱いた課題感を教えて下さい

下島 『怪盗ロワイヤル』に限らずどんなゲームにも当てはまることですが、ゲームには「コアUX」という「最もユーザーに提供したい体験」が存在します。プロデューサー就任当初はこの「コアUX」がきちんと明文化されて運営メンバーに共有されていませんでした。またUXビジョンという半期ごとに目指すべきゴールやそのための戦略もきちんと明文化されて共有されておらず、ここに課題を感じていました。僕が着任して最初にやったことは、コアUXを言語化してメンバーに共有すること。そして向こう半期のUXビジョンとそれを実現するための戦略/ロードマップを明文化して運営メンバーに共有することでした。

– どのようなゴールと戦略を掲げたのでしょうか?

下島 事業観点と組織観点、それぞれ18年度下半期のゴールを決めました。事業観点では「仕組み化」、組織観点では「自走化」です。これらのゴール実現のために具体的にこういうことをこういうステップでやっていきます、という戦略を描いていきました。

まず事業観点の「仕組み化」についてですが、ここでは「持ち球施策の開発/アップデート」というのを行いました。そもそも毎月施策が入れ替わるゲームにおいて毎回施策をゼロから考えるというのは時間も掛かって大変です。一個の施策に時間を掛けすぎるとプレイヤーに満足頂ける施策ボリュームも確保出来なくなってしまいます。そのため「これを出せばウケるよね」という、イベント毎の持ちネタのようなものを作ることから始めました。これが「持ち玉施策」です。そしてこの持ち球施策を実施する毎にプレイヤーが飽きを感じずに楽しんで頂けるようアップデートを加えていきました。このように持ち球施策という土台を作ることで、毎回低工数でありながらプレイヤーに毎月違った体験を提供することができるようになりました。

「持ち玉施策」を軸に、年間7つに及ぶコラボを実現

– 昨年度は年間で7つにも及ぶコラボ施策を実施したと伺いました。何か思い出に残っているコラボ施策はありますか?

下島 飲料メーカー様とのコラボや行政とのコラボなどどれも甲乙つけがたいチャレンジングなコラボ施策でしたが、その中でも一番印象深いのは『探検ドリランド』とのコラボですね。これは川口がGREEさんから提案頂いた案件で、先ほどの「持ち玉施策」のアップデートの一つとして使えるなと思い、すぐにやりたいと手を挙げました。これまで『怪盗ロワイヤル』では漫画やアニメとのコラボ施策はありましたが、ゲーム同士のコラボは実現したことがなく、そういう意味でも新しいチャレンジでした。

川口 『ドリランド』が10周年ということで、GREEさんを代表するタイトルとDeNAを代表する『怪盗ロワイヤル』のコラボをこのタイミングでやったら面白いのではないかとご相談を頂いたとき、「これは下島が飛びつくだろうな」と(笑)。案の定すぐに手を挙げてくれました。そのあとは彼をはじめとするチームメンバーがプレイヤー目線で企画を一気に詰めてくれました。彼の強みはやはり実行力ですかね。

– 下島さんには「任せればやってくれる」という信頼感があるわけですね

 

川口 そうですね。その信頼が生まれたきっかけは高知県とのコラボ施策ですね。2018年にDGTの5タイトルが高知県とのコラボ施策を実施させて頂いたのですが、当時の下島はまだ未熟さもあり(今もありますが笑)、自分も施策の具体的なところまで議論に入って侃侃諤諤と意見をぶつけ合いました。結果的には下島が施策オーナーとして、前例もない行政との5タイトル連携コラボを実現したことが信頼に繋がりました。

先ほど下島から「組織の自走化」という言葉がありましたが、彼自身が高知県とのコラボ施策をきっかけに力強く自走し始めた。それ以降はほとんど自分は仔細なところには口出しせずに、出来る限り任せるようにしています。

– 施策の中には自治体や学校など、なかなかイメージしづらいジャンルとのコラボもあります。今後も多方面からのアプローチがあるのでしょうか?

川口 そうですね。我々は「あらゆるゲームの可能性を引き出し、最高のユーザー体験を実現する。」という言葉を事業ビジョンとして掲げています。そして”ゲームの可能性を引き出す”ためには、既存の枠組みには囚われない取り組みにも引き続きチャレンジしていくつもりです。行政とのコラボ施策も、タイトルを遊んでくれているプレイヤーが楽しんでくれることはもちろんとして、ゲームを通じて行政・地域に対してもインパクトを残せたと思います。ゲームにはそのような可能性がすごくあるというのを実感しています。ゲームを遊んでくれているプレイヤーに僕らからデライトを届け続けるというのは大前提として、それに加え、例えば他の業界と僕らが運営しているゲームを繋ぎ合わせることで、新しい価値が生まれると信じているし、実現したい。

DGTのビジョンの実現につながると思うので、積極的にチャレンジしたいなと。

全員がプレイヤー目線で考え尽くす『怪盗ロワイヤル』流のチームビルディング

– 先ほど組織観点でのゴールとして「自走化」というキーワードが出てきました。組織の「自走化」とは具体的には何に取り組まれたのでしょうか?

 

下島 「自走しているチーム」とは一人一人がタイトルのUXビジョンを実現するために何をやればいいかを自分で考えて動けるチームだと考えています。そのために具体的には2つの取り組みを行いました。1つ目がスクラム施策。もう1つがプロジェクトオーナー化です。

まずスクラム施策についてですが、以前はプランナーが「こういう施策がやりたい」と言って、それをエンジニアとデザイナーが作るという企画開発のサイクルになっていました。ただこれではプランナーの能力以上のものは作れないし、他の職種にとっては自分ごとにならない。これを踏まえて今までよりも一ヶ月程度前倒しで企画を揉み始め、職種の壁を越えて企画段階から議論し、企画を洗練させていくことができるフローに変えました。これがスクラム施策です。これによって全メンバーが企画を自分ごとに捉えることができ、施策の精度も向上して、プランナーだけでは実現しえない施策の実現に繋がったと感じています。

続いてもう一つの「プロジェクトオーナー化」ですが、これはまさに「自分ごと化」の促進です。何か課題やそれに紐づくミッションが生まれたらそれをプロジェクト化して各メンバーにオーナーを担ってもらいます。オーナーを任されたメンバーにはなるべく口出しはせず、適宜相談に乗りながら基本的にはそのメンバーに完全に任せる形で進めてもらいました。これによってチームメンバーのオーナーシップ・リーダーシップが養われていくだけでなく、自由にやれる分メンバーがより自分ごととして業務に取り組めるようになり、自走化の促進につながったとったと感じています。

10周年を迎える『怪盗ロワイヤル』は、昔の仲間と会ってまた一緒に遊べる企画の実現を目指す

– 10周年を迎える『怪盗ロワイヤル』は今後、どうなっていくのでしょうか?

下島 今年10周年という節目の年を迎えるので、このタイミングで面白いことを一発やりたいと思っています。昨年度は既存プレイヤーに楽しんで頂くことでタイトルが盛り上がったという話をしましたが、10周年では、過去に『怪盗ロワイヤル』から離脱してしまったプレイヤーに戻ってきてもらうことをメインテーマにしています。『怪盗ロワイヤル』って登録者数で言うと東京都の人口より多いんですよ。それだけ多くのプレイヤーに遊ばれてきたタイトルなんです。その方達の全員とは言わないまでも、「今年で怪盗ロワイヤル10周年らしいよ」ということをきっかけに『怪盗ロワイヤル』に戻ってきてくれて、また昔の仲間と会って一緒に遊んでもらう…というようなストーリーを実現したいと思っています。それが具体的にどういうものになるかは乞うご期待!ですね。

 

ゲームの可能性を拡げるチャレンジに共感出来る人にDGTに興味を持って欲しい

– 最後に、『怪盗ロワイヤル』をはじめ運営タイトルを今後一層盛り上げていくために、どんな人と働きたいかお聞かせください。

下島 僕は「コトに向かって最後までやり切れる人」ですかね。自分に矢印を向けることなく、タイトルをより良くするために何をすべきかをきちんと考えられる人。言い訳したり途中で投げ出したりせず、一度やると決めたことを最後までやり切れる人。そんな人と一緒に働きたいです。そういう人は周りから信頼されますし、大きなチャレンジを任せられるようになると思います。それ以外では「野心的な人」。僕とちょっと考え方が似ているというのもありますが、のし上がってやろうと勢いを持っている人は一緒に働いていて気持ちがいいです。そういう人と一緒にいると楽しいですし、一緒に高みを目指していけるので、そういう一面があるとより良いかなと思っています。

川口 自分は、ゲームの可能性を広げるという事業ビジョン、”DeNA Quality”・”REBUILD”といった組織文化に共感してくれる人と働きたいですね。DGTに興味を持って頂くきっかけは「DGTのゲーム運営ってどんなことをしているんだろう」、「未経験から挑戦したい」、「ワークライフバランスが良さそう」とか、そういったきっかけで興味を持っていただくのも大歓迎です。ただ、事業ビジョンや組織文化は会社の”色”であり、中長期的にも揺るがないものなので、事業ビジョンや組織文化への共感があればより一層強い力でチャレンジしていけると思うので、共感する部分があれば是非DGTに声を掛けて欲しいです。

– ありがとうございました!